ほんの寄り道、おきてのみやげ

法令の素顔をゆるりと愉しむブログです

【第3回】んっ、パワハラの旅? 

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 法令の素顔をゆるりと愉しむブログ、
「おきてのみやげ」の夜間不定期便をお届けいたします。
 ナビゲーター(navigator)を務めます、
テラボ(terrabo)です。 

 やわやわした講義室を後にして、
昼間の物憂(ものう)さをシャワーで流してから…
 今宵は、「パワハラ」のトピックで、
ゆったりと過ごしましょう。

1 旅の始まりは、ネット情報 

 今回のテーマは、
パワーハラスメントパワハラ)をめぐる法令の旅」です。

「最近、パワーハラスメントパワハラ)の法律が出来たんだって。」
という耳寄りな情報を聞くと、
大半の方は、スマホやPCで検索されるでしょう。

 そこで検索結果を、上位から斜め読みしますと、
だいたい、のっけから、
「 パワハラ防止(規制)法が2020年6月施行。
 企業に…措置が求められる。
 そこで改正労働施策総合推進法を説明すると… 」
といったフレーズを目にします。

「 パワハラ防止(規制)法?改正労働施策総合推進法って?
  これって、同じ法律なのかな?」
と腑に落ちないまま、読み進むと、
「 パワハラ指針では、…」
とあるので、そういう指針があるらしいと気づきつつも、
先ほどの法律との関連がイマイチ。

 そうこうしているうちに、目玉記事に入ります。
「 職場におけるパワハラの定義は、
 ① 優越的な関係を背景とした言動であって、
 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 ③ 労働者の就業環境が害されるもの
 の3つを要件として、…。
  代表的な6つの類型の言動…、説明しましょう。」

 「パワハラ」を検索される方にとっては、十中八九、
ハイライトとなる「パワハラの具体的な言動」
に注目が集まりやすく、
冒頭の法律や指針の説明は、
曲紹介のイントロのような扱いになってしまいます。
(サビじゃないってことです。)

 ですが、このコーナーは、あくまで、
「法令の素顔をゆるりと愉しむ」ものですから、
このイントロこそが、ウナギの肝焼き(山椒の香り付き)
のように美味しい、いや大切なのです。

 パワハラの具体的な言動についての解説を、
旅の目的地で役立つ観光ガイドになぞらえれば、
関連する法律の条項や指針の説明は、
旅先にたどり着くまでの道すがら(道中)になるでしょう。

 目立たないマイナー記事と、減らず口をたたかれても、
ここはしぶとく、ローカル路線の旅を続けましょう。

 

2 指針で途中下車 

 さて、いろいろなネット記事を探る中、
「法令の旅」の道すがらとしては、所管官庁が編集したもの、
本件ですと、厚生労働省のパンフレットが重宝します。 

 パンフレットの末尾のほうを見ると、
「Ⅸ 関連条文、指針」
とありました。
 これがお宝の隠し地図です。誰も隠してないけど。

 そのあたりをペラペラめくると、
「 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動
 に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等
 についての指針
」(令和2年厚生労働省告示第5号)
が目に止まります。

 それなりのボリュームがある指針ですが、
その指針の内容と、パンフレットを読み比べてみると、
お役所言葉で書かれている指針の内容を、
色を付けて項目建てしたり、ビジュアルに図式化したものが、
パンフレットの中身となっていることに気づきます。

 ですから、指針のほうが、おおもとになります。
 それでは、その指針の法令上の位置づけは、
どのようなものでしょうか?

 そこで、指針の後ろにくっついている括弧を見ると、
令和2年厚生労働省告示第5号
法令番号が記載されていますので、
法令上の位置づけは、「告示」と判明します。

 厚生労働大臣が定める告示ですから、
「大臣告示」でも、差し支えありません。

 この指針は、いろいろな情報をもたらしてくれそうなので、
ぶらっと途中下車をしましょう。
 指針の冒頭は、次のとおりです。

「1 はじめに
  この指針は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の
 雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
 (昭和41年法律第132号。以下「法」という。)
 第30条の2第1項及び第2項に規定する
 事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした
 言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 その雇用する労働者の就業環境が害されること
 (以下「職場におけるパワーハラスメント」という。)
 のないよう雇用管理上講ずべき措置等について、
 同条第3項の規定に基づき事業主が適切かつ有効な実施を図る
 ために必要な事項について定めたものである。」 

3 実体規定と根拠規定 

 「1 はじめに」を読むと、法律の条項が2箇所に現れます。
 緑色紫色の部分です。
 察しのいい方は、お気づきと思いますが、
前回と前々回では、
緑色が、対象となる法律の題名、
紫色が、改正する法律(改正法)の題名でした。
 でも、ここでは、ちょびっと違います。

 緑色
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律
 第30条の2第1項及び第2項
の部分は、
事業主の措置義務や努力義務といった実体法の規定
実体規定」を意味し、
その実体規定の中身は、
「 事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした
 言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 その雇用する労働者の就業環境が害されること
 (以下「職場におけるパワーハラスメント」という。)
 のないよう雇用管理上講ずべき措置等」
となります。

 一方、紫色
同条(第30条の2を指します。)第3項
は、指針の根拠となる法律上の規定、
根拠規定」を意味します。

 本ブログは、法令の素顔をゆるりと愉しむものですから、
パワーハラスメントの中身である実体規定には目もくれず、
さっさと、根拠規定に向かいましょう。

4 ついに根拠となる条項を発見! 

 「根拠となる条項を発見!」って、
先ほど、根拠規定は「第30条の2第3項
と話している時点で、全部まるっきりお見通しですが、
一応、お約束として、驚いてください。

 次のとおり、紫色の部分が根拠規定です。

〇 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律」 
 (昭和41年法律第132号)
 (雇用管理上の措置等)
第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係
 を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を
 超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される
 ことのないよう、当該労働者からの相談に応じ、
 適切に対応するために必要な体制の整備その他の
 雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主
 による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたこと
 を理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱い
 をしてはならない。
厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき
 事業主が講ずべき措置等に関して、
 その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針
 (以下この条において「指針」という。)
 を定めるものとする。
(第4項から第6項まで)

 これで、ミッションコンプリート。
 めでたし、めでたし… えっ。

5 その先の目的地へ 

 ミッションコンプリートと、ぬか喜びしたところでしたが、
根拠規定にせよ、実体規定にせよ、
そもそも、そういう規定が設けられたのは、
どのようにしてなのでしょうか? 

 そういえば、本ブログの最初に、
パワハラ防止(規制)法」と並んで、
改正労働施策総合推進法」とありました。
 ということは、「労働施策総合推進法」が改正されたはず?

 でも、令和元年に、そうした改正法は見当たらなかったが…
と思いつつ、パンフレットを見渡すと、
またもや、見つけました。

「 2019年の第198回通常国会において
 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 等の一部を改正する法律」が成立し、
 これにより
 「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律
 (以下「労働施策総合推進法」という。)が改正され、
 職場におけるパワーハラスメント防止対策が
 事業主に義務付けられました。」

 なるほど、この手の記述は、中央官庁のパンフレットらしいです。
 改正する法律が分かったところで、
この文章を参考に、さらに追跡してみると、次のようなります。

 なお、前回と前々回のように、
緑色が、対象となる法律の題名
紫色が、改正する法律(改正法)の題名としています。

 令和元年5月29日、
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
 等の一部を改正する法律
 (令和元年法律第24号)
が成立し、同法第3条により、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律
 の一部改正
が行われ、それにより、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
 及び職業生活の充実等に関する法律
  (昭和41年法律第132号)
 に、30条の2が新設されました。

 これで、全て丸わかりとなりましたので、
本当にめでたし、めでたし。

 えっ、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定
  及び職業生活の充実等に関する法律
 という題名の前の題名は?

 それは、第1回でやりましたよね。
 お後がよろしいようで。

 今宵は、これでおしまいです。
 それでは、また。