ほんの寄り道、おきてのみやげ

法令の素顔をゆるりと愉しむブログです

【第1回】んっ、法律の「題名」を改めた?

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 法令の素顔をゆるりと愉しむブログ、
「おきてのみやげ」を始めました、テラボ(terrabo)です。
 表舞台である「おきての手引き」の後に、
課外ルームとして、「おきてのみやげ」を用意しました。

 にぎやかな学内から戻り、夕暮れの徒労感を
シャワーで流してから…
 今宵は、「題名」のトピックで、ひと息つきましょう。 

 1「題名」を改めるとき

 法律の「題名」とは、その法律の正式な名称を指します。
 平たく言うと、雑誌やブログの記事に付ける「タイトル」
みたいなものです。

 ちょっと前置きですが、「題名」とは法令上の用語で、
題名を改める」のように用います。 
 一方、「名称」や「タイトル」は、普段から、
日常の中で使われる言葉です。

「名は体(たい)を表す」のように、
記事内容を簡潔明瞭に表したものが、タイトルです。
 ですから、記事の内容をちょこっと見直すとか、
アップデート(update)ぐらいであれば、
記事のタイトルはそっとしておいて、
最終更新の日付を書いておけば、済まされます。

 ところが、元の記事の内容が刷新されて様変わりしたり、
新たなコンテンツを詰め込み過ぎて、もはや、
元のタイトルでは通用しなくなってしまうことがあります。

 実質である「体」が、それなりに変わりますと、今度は、
「名」を見直す必要が出てきます。
 これが、法律の「題名」を改める理由です。

2「題名」を改める、改めるとき、改めれば… 

 そこで、法律名が移り変わるケースを、
さしあたり、3つほど、ご紹介しましょう。
 本ブログは、法令の素顔を愉(たの)しむコーナーですので、
中身に深入りせず、サラッと見ていきましょう。

(1) 青少年雇用促進法

 まず、さわやかな青少年ということで、
「青少年の雇用の促進等に関する法律」
から始めましょう。

 もともとの題名は、
勤労青少年福祉法」 (昭和45年法律第98号)
で、昭和の香りが漂う、古めかしいものでした。
    ⇓ 
  その後、
勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律
(平成27年法律第72号)第1条により、
その題名が改正され、装いも新たに、
青少年の雇用の促進等に関する法律
 (昭和45年法律第98号)
となりました。
 これが、現行の題名です。めでたし、めでたし。

 対象となる法律の題名を緑色に、
改正する法律(改正法)の題名を紫色
区別してみました。分かりやすかったでしょうか。
「分かる(まいう)~」という声が出ましたら、花マルです。 

(2) 労働施策総合推進法

 ここまで、すんなりと進んできましたので、次は、
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
 職業生活の充実等に関する法律」
を取り上げましょう。

 パッと読んで、頭に何も残らないほど長い題名ですが、
気にしない、気にしない。

 もともとの題名は、
雇用対策法」 (昭和41年法律第132号)
で、すっきりして分かりやすい題名でした。
    ⇓
 その後、働き方改革関連法(略称)の正式名称である、
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律
(平成30年法律第71号)第3条により、
その題名が改正され、
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
 職業生活の充実等に関する法律
 (昭和47年法律第113号)
となりました。
 これが、現行の題名です。めでたし、めじるし。

 このあたりで、つまらないと思ってブログを閉じようとした方、
ちょっと落ち着きましょう。 

 確かに、(1)と比べて、
① 当初の題名が、すっきりして分かりやすかったのに、
 記憶に残らないほど長くなってしまい、面影もなくて気色悪い、
② 改正する法律の題名が、「~整備に関する法律」とされ、
 見慣れない感じがして集中力が失せた、
③ 対象となる法律の題名と改正する法律の題名が違い過ぎて、
 何も感じなくなった

など、めっきり不信感を抱かれたと思いますが、
題名を改正する仕組みは、(1)と同じです。

 なお、
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は、
・ 労働基準法の一部改正 (第1条関係)
・ じん肺法の一部改正 (第2条関係)
・ 雇用対策法の一部改正 (第3条関係)
・ 労働安全衛生法の一部改正 (第4条関係)
・ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び
 派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正
 (第5条関係)
・ 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
 の一部改正 (第6条関係)
・ 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
 の一部改正 (第7条関係)
など、
「複数の法律を束ねて、一括して改正する法律」
(いわゆる、束ね法一括法)です。

 えっ、
「 法律の題名が一列に並ぶと、漢字のオンパレードで、
 目がチカチカして、立ちくらみがする。」
という方は、安堵してください。
 みなさん同じですし、そのうち治ります。たぶん… 

(3) 男女雇用機会均等法

 そろそろブログを移ってしましそうなので、先を急ぎます。
締めくくりは、まったりと、
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 に関する法律」
を取り上げましょう。

 もともとの題名は、
勤労婦人福祉法」 (昭和47年法律第113号)
で、重々しい響きがあります。
 先の「勤労青少年」といい、「勤労婦人」といい、
当時は「勤労」という言葉が、ポピュラーだったようです。
    ⇓  
 その後、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を
 促進するための労働省関係法律の整備等に関する法律
 (昭和60年法律第45号)第1条により、
その題名が改正され、
「 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 女子労働者の福祉の増進に関する法律
 (昭和47年法律第113号)
となりました。
 なお、言葉遣いが、「婦人」→「女子」に替わっています。
    ⇓ 
 さらにその後、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 のための労働省関係法律の整備に関する法律
 (平成9年法律第92号) 第1条により、
その題名が改正され、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 女性労働者の福祉の増進に関する法律
 (昭和47年法律第113号)
となります。
 なお、言葉遣いが、「女子」→「女性」に替わっています。
    ⇓
 そして、上記の束ね法(平成9年法律第92号)は、
二段ロケット方式ですので、第二弾のブースターが発動して、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 のための労働省関係法律の整備に関する法律
 (平成9年法律第92号) 第2条により、
さらに題名が改正され、
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等
 に関する法律」(昭和47年法律第113号)
となりました。
 これが、現行の題名です。めでたし、めつぶし。

 ここまで読まれた方のお声は、おおよそ見当がつきます。
「 ふざけるな!やっぱり騙(だま)された。
 緑色紫色で色分けするとか、
 視覚で区別するとかの問題じゃないだろう。
 きっと、この筆者は、脳みそが崩れているのか、
 とてつもなく偏屈な性格に違いない。」
と思い浮かべたかも知れません。

 きっぱり断言しましょう、それは風評被害です。
これでも、「改め文」や「新旧対照表」という
立法技術上の裏舞台をお見せしないように
しなやかに工夫を重ねた結果です。

 このブログは、「法令の素顔をゆるりと愉しむ」ものですから、
しかめっ面で意欲満々に取り組んではいけません。
 腕組みするポーズでは、ダルマさんみたいに転んじゃいます。

 お笑いショーや、謎解きのように、
サクッサクッと、ページをめくっているうちに、
「 あっ、そういうこと。意外とシンプルなルールじゃない。
 これなら、公文書もラクラク読みたい、読める、読めた…」
となること、安請け合いです。

 

3 馴染み深い題名

 これまで、法律名がコロコロ変わる話で、
どうしても小難しく、四角四面になりがちでしたので、
ここで、ひと休みして、
法律名がそのままのケースに、話を切り替えましょう。

 例えば、
労働基準法 (昭和22年法律第49号)、
最低賃金 (昭和34年法律第137号)
などは、それらの法律が成立した当時から、
現在に至るまで、法律の改正は幾度もありましたが、
題名が改正されたことは一度もありませんでした。

 ですから、人事・労務管理を担当したことのない方でも、
聞き覚えのある題名かと思います。
 やっぱり、この手の話はホッとしますね。

4 お馴染みの題名だけど… 

 そうした中、少し変わり種のケースがあります。
 それは、労働組合法です。
 いま、少し身構えた方、あくまで愉しいコーナーですよ。

 もともとの題名は、
労働組合」 (昭和20年法律第51号)
でした。
    ⇓ 
  その後、
労働組合」 (昭和24年法律第174号)
により、
労働組合法 (昭和二十年法律第五十一号)の全部を改正する。」
とされ、その題名が、
労働組合」(昭和24年法律第174号)
となりました。
 これが、現行の題名です。めでたし、めこぼし。

「 えっ、なんも変わってないけど…」
「 いやいや、よくご覧ください。」
「 あっ、法律のタイトルは同じだけど、
 その後ろのカッコ内の数字が違う。」
「 ピンポ~ン。法律の題名は同一ですが、
 法律番号が異なっています。
  でも、同じ題名ですから、現行法でない方、つまり、
 「労働組合法」 (昭和20年法律第51号)の方を、
 「旧労働組合法」とか「旧法の労働組合法」と呼んで、
 便宜上、使い分けるわけです。」
「なるほど、切り口が分かると、シンプルですね。」 

 上記2で紹介しました、3つのケースを振り返りますと、
いずれも、一部改正する方式で、題名が改正されても、
法律番号は、改正前のものを引き続き用いています。

 労働組合法のケースでは、法律を全部改正する方式で、
新しい法律番号を付けたわけです。
 竹を割ったようにシンプルでしょう。割ったことないけど…

 今宵は、これでおしまいです。
 それではまた、近いうちにお会いしましょう。

添え書き 

 このブログは、このようなペースで、のらりくらりと
進んでゆきます。
 あえて、番宣をさせていただくと、
「法律の中身を取り上げることなく、法律の素顔を愉しむ。」
という、荒手の思いつき企画です。

 どうか次の回を、お愉しみに!

以上